Trois-M

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「デタッチメント・アパートメント」

東京は戸建住宅(デタッチド・ハウス)が世代を経るごとに細分化して高密度化する特徴を持ち、この間口4m広さ93m2の旗竿敷地も戸建住宅の庭が相続で分筆されたものである。駅からほど近い都心の住宅地に建つこの集合住宅は、用途を住宅+αと想定し、各ユニットの面積は27m2程度で、許容ヴォリュームに対して小さく、多様な場所を提供するために上下階を持つ2ルームのメゾネット形式にした結果、各ユニットは鴨長明の方丈の庵と同程度の大きさとなっている。敷地はもともと樹々が繁る庭で、東側前面道路の向こう側は寺社地、西側隣地は駐車場と東西に抜けがあった。そこで細長い敷地を三分割し敷地内にも余白を設けて、住宅の庭に小さな離れを3つ置く設えとした。また通常この手の集合住宅は長屋形式がオーソドックスな設計手法であるが、この旗竿敷地は狭すぎて長屋では有効利用できないので、避難通路と窓先空地のある共同住宅として計画した。ただし屋外避難通路に接する1階の室内幅は1,620mmで、この狭い幅を居室として有効に使うことが重要となる。さらに階段やキッチンやユーティリティなど、身体性に基づく微妙なスケール感の調整が建物全体で行われ、狭さを感じさせないようにしている。また敷地には1mほどの高低差があり、それに呼応して各ユニットの1階床にレベル差があるが、基礎および2階床梁レベルを統一した結果、1階天井高がそれぞれ異なり、外部との適切な関係性が構築されている。各住戸は最小限の部位で接続して隣接するユニットとの距離感を確保し、2階ではスリットによって東西南北から光が入りデタッチ(非接触)なのが認識できる。この集合住宅は、東京のマクロ的な建築の建ち方と、パンデミックのコロナ禍を経た身体性に基づくミクロ的なスケール感の接点に存在し、非接触型の共同住宅という新しい生活の提案として、ここで暮らす価値を示している。
設計監理:三幣順一/A.L.X.
構造設計:久米弘記(久米弘記建築構造研究所)
施工  :伊藤工務店
所在地 :東京都新宿区
用途  :共同住宅(3戸賃貸)
構造規模:木造2階建
敷地面積:93.63m2
建築面積:47.98m2
延床面積:82.44m2
竣工年 :2022年
写真撮影:鳥村鋼一
掲載誌 :GA JAPAN177/新建築2022年8月号
Architects: SAMPEI, Junichi /A.L.X.
Structural engineers: KUME, Hiroki
Photographer: TORIMURA, Kouichi
Location: Tokyo, Japan
Usage: Apartment
Structure: Wooden construction; 2 stories
Building area:93.63m2
Site area:47.98m2
Total floor area: 82.44m2
Completion date: 2022
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